賞味期限の向こう側へ

賞味期限の向こう側へ

2025/06/05

京都の老舗だし屋、うね乃の社長が語る、ちょっとためになるおだしのいい話

 

『賞味期限の向こう側』

先日、消費者庁から「賞味期限を延ばすためのガイドライン」が発信されました。食品ロス削減に向けた一歩とのことですが、そもそも日本の食品表示が「製造年月日」から「賞味期限」に切り替わったのは昭和60年代。国際基準に合わせた結果ですが、日本の食文化や歴史から生まれた食品を、ひとつの物差しで測ることには、やはりどこか無理があったように感じます。

うね乃で扱う乾物は、まさにロングライフ食品の代表格。昆布は、寝かせることでより深い旨みを引き出すという素材。今年より来年の方が少なくて濃いおだしを出してくれます。麺つゆに使う醤油だって、時間をかけて熟成された方が、味わいにぐっと奥行きが出るものです。

 

「冷蔵庫は現代の生ごみ製造機」

そんな皮肉を聞いたことがあります。思い出したように奥から出てくる食品に、ああ・・・と肩を落とす経験、どなたにもあるのではないでしょうか。けれどその一方で、「賞味期限が切れたから」と、味わうことなくゴミ箱へ入れてしまう瞬間には、不思議と罪悪感が和らぐ気がします。本来、食べ物の状態を見極める力は、人が持つ五感にこそありました。見て、触って、香りを確かめて、食べられるかどうかを判断する。そんな感覚も、いつの間にか表示任せになってしまってはいないでしょうか。食品ロスのカギを握るのは、実は私たちひとりひとりの意識です。

最終的に「食べる・食べない」を決めるのは、消費者の大切な権利。その判断を、少しだけ丁寧にして見るだけで、食卓の風景がまたひとつ、豊かになるかもしれません。

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