京都の老舗だし屋、うね乃の社長が語る、ちょっとためになるおだしのいい話
『ええ塩梅』
幼少の頃、祖母とお風呂で湯船につかっていると「どーえーええあんばいか?」
といつも聞かれました。
お湯の温度が快適化という意味なのですが、自ずと「もうちょっと熱くとか、ち
ょっとぬるいなぁ」とか答え、ちょっとという曖昧で便利な言葉でお互いのちょ
うど良いところを見つけていたのを思い出します。この頃ではお料理の味加減や
温度、分量などレシピがある場合でも、それをもっと自分好みに近づけるときに
良い塩梅に仕上げて下さい等使われています。そもそも塩梅の語源は雅楽演奏に
使われる篳篥(ひちりき)の奏法から来ていて、息の強弱で音の高低を調節する
奏法とも言われています。
このことはおだしの世界にも通じることで、濃度を変えたり、抽出時間を変えた
りしてその日の調度よいおだしに仕上げる瞬間は、自分好みにおだしをそだてて
いる感じがします。
例えば、だしパックじんの説明には500ccに1パックと示されていますが、300cc
に1パックにするとか、5分煮出すを10分弱火でとかするとまた違ったおだしに
出会えます。篳篥(ひちりき)が雅楽の主旋律を奏でるように、おだしはお料理
をスムーズに進める役割なんでしょうね。